御社には以前より弊社の技術系・業界エキスパートコミュニティ「OIカウンシル」をご利用いただいています。チームのミッションと社外知見の活用はどのようにつながっているのでしょうか?
会社としては、材料や技術ごとに研究所があり、それぞれの専門性をもって新素材開発を行っています。私たちは高分子材料研究所という部署において、新しい樹脂材料の研究開発を行っており、フラスコレベルでの検討から生産レベルに持ち上げるまで一貫して担当しています。
新材料の開発においてハードルが高いのは、顧客ニーズの把握です。コンセプト段階から、いろいろな情報源にあたって大きな事業が育つかどうかプロジェクトの成功確率を見極めていく必要がありますが、そのようなまったくの初期段階で、既存のお客様のところへ出掛けて行って「どうですか?」と反応を伺うのはなかなか難しいです。そういう時に、OIカウンシルのような社外知見サービスを活用しています。特に、OIカウンシルの場合は、海外のエキスパートに接触できるので、海外における先行事例や顧客ニーズの確認ができます。私たちの事業は海外での販売比率も高いため、海外市場のリアルな声も必要です。
今回、世界中の技術系エキスパートにクイックに質問を投げかけ、3日で回答が得られることを特徴とした新サービス「OIC direct」をご利用いただきました。同じく「OIカウンシル」を活用した既存の「OIC survey(オーアイシー・サーベイ)」とはまた異なる目的があったかと思います、詳しく教えていただけますか?
現在、10年かかるといわれる研究開発においてまさに1〜2年目というアーリーステージのプロジェクトがあります。まったく新しい樹脂を扱っており、その性能はわかってきているので、使い途を想像していく段階に来ています。性能の近い樹脂がどんな使われ方をしているか、逆に、どうして使われていないのかも含めて、用途についてさっと情報を集めたいと考えました。特に、使われなかった事例はなかなか世の中に出回っていませんから、簡単に調べることはできません。自分たちでは想像しきれない「お宝情報」がすぐに得られるかもしれない、専門家ネットワークに聞いてみたいと思っていましたね。
実際に使ってみていかがでしたか?「OIC survey」との違いとして実感されたことはありますでしょうか?
3日というスピードは非常に早く感じましたね。目的としていたうち、近しい素材の用途事例は取得できました。「使われなかった事例」についてはもう少しサンプル数が欲しかったので、質問をそちらに絞った方が調査方法としてはよかったのかなと思っています。
「追加質問機能」もさっそく使いました。かゆいところに手が届く感覚というか、突っ込んだ質問ができるのでよいですね。
1つのテーマに複数の質問項目を設定できる「OIC survey」も、今後も活用するつもりですが、アーリーステージで素早く状況を確認したいことについては、「OIC direct」を数多くこなしていくのがよいのではと思っています。今回のトピックもそうですが、1つの調査に複数の要素を入れると欲しい回答が得づらくなるので、聞きたいことを切り分けて質問すると、より短期間で得たい情報にリーチできそうです。
おっしゃる通り、「OIC direct」は小回りが利くのが特徴です。複数のシンプルな質問をしたり、質問ごとに母集団を変えることもできるので、最初に得た回答次第では、次の質問をする時に別のターゲットにヒアリングしたりといった使い方もできます。
特にピンポイントでヒアリングしたい項目がある時には活用が広がりそうですね。実際、部署内ですでに「OIC direct」を使ってみたいという声をいくつか聞いていますし、他部署の案件でもフィットするケースはありそうです。
他部署のご様子もご存知とのことですが、外部知見の活用をメリットとする考え方は社内で共通しているのでしょうか?どのような努力や取り組みをなさっていますか?
そうですね、本部内には「機会探索グループ」という部署があり、私(小西)は研究所の仕事と兼務しています。機会探索グループは、専門ごとに分かれた研究所に横串を通す組織で、ニーズ情報の取得やアイデアの市場価値の検証を含め、外部の声を聞いて積極的に「いいもの」を取り入れていこう、という組織横断的な活動をしています。私たちのグループがハブとなり、外部知見活用の情報やノウハウを提供しています。私自身も、自分の研究開発テーマを進める業務とはマインドを切り分けながら、有効なリソースを探したり、社内で共有できる仕組みを作ったりと、各現場のスタッフが外部知見の活用に踏み出せるような環境づくりに取り組んでいます。
組織的に外部知見を活用されようとするモチベーションはどこからくるのでしょうか?
例えば私の専門であるポリマーの領域は成熟してきており、「新しいこと」を探すのは容易ではありません。プロジェクトの実現性や収益性などをできるだけ早く見極めたいというのは切実なニーズです。社内の情報や自分たちのネットワークだけではアイデアも偏ってしまいますので、外部知見を活用して研究開発コストと成果とのバランスを取るのに役立てようとしています。
また、私たちの事業モデルでは、1つの素材を開発すると領域の異なる複数の用途に使われるという特徴があり、研究開発でも技術シーズをベースにして展開していくケースがあります。一方で、ニーズをとことん突き詰めて研究開発テーマを生み出していくというプロセスも必要です。どちらのプロセスにも外部知見の活用は有用と考えています。
今後も、御社の研究開発プロセスの効率化・加速化に弊社サービスをご活用いただけるよう私たちも努力してまいります。大変貴重なお話をいただきありがとうございました!