御社には昨年、ナインシグマの「メンバー型オープンイノベーション支援プログラム」をご利用いただきました。
会社としては、材料や技術ごとに研究所があり、それぞれの専門性をもって新素材開発を行っています。私たちは高分子材料研究所という部署において、新しい樹脂材料の研究開発を行っており、フラスコレベルでの検討から生産レベルに持ち上げるまで一貫して担当しています。
上原さん:はい、私たちの所属する「未来技術創生センター」は2022年4月に創設された新しい組織で、2030年以降を見据えた長期的な視点から、未来技術や市場機会の探索・実証、技術動向の調査を行なっています。未来に必要となる技術やプラットフォームを創るべくスタートした新しいプロジェクトでナインシグマに伴走してもらいました。組織もできたばかりで人的リソースも限られている中、自分たちにとっては馴染みの深い分野であってもまったく新しい取り組みを考えていくには、外部知見の活用が有効と判断しました。
伴走型のご支援に引き続いて、今回、私たちの新しいサービス「OIC direct」をご利用いただきました。その目的を教えていただけますか?
上原さん:「OIC direct」を利用したのは、同プロジェクトを継続する中、自分たちで実施したある調査をまとめにかかっているタイミングでした。いよいよサマリーに取り掛かるという段階だったのですが「そもそも論」のところが見えず、もやっとしていたんです。つまり、私たちがターゲットとしている素材・事業を取り巻く市場環境について、海外企業がいち早く動き始めているという事実はわかっていたのですが、それぞれがどうしてそのような動きを取っているのかという背景まで机上調査では調べきれていませんでした。特に、ヨーロッパの事情について、現地のプロフェショナルの意見を聞きたいと思っていました。自社の海外支店もありますが、当該の事業は主に日本で行なっているものなので、社内ネットワークでは十分な情報が得られなかったのです。そこで「OIC direct」を使ってみようということになりました。
「OIC direct」では、ターゲットを絞りこんで質問をされたようですね。実際に活用されてみて、そのプロセスや結果はいかがでしたか?
今泉さん:そうですね、ヨーロッパ地域を中心に情報を収集したいという明確な希望があったので、ヨーロッパ地域在住のエキスパートにフォーカスしました。質問から3日で8名の方から回答が得られ、スピード感はもちろん、公開情報の裏側にある事情や考えを知りたいという要望に沿う内容も聞けたので、十分満足しています。
「OIC direct」の利用プロセスでは、ナインシグマのスタッフから質問の作り方のサポートを得られたことが大きかったです。今回は特に「プロジェクトそのものは知らなくても、存在する課題や状況は知っている」という方からも情報を集めたいと思っていました。その時に、「〜というプロジェクトを知っていますか?」という聞き方をすると「Yes」「No」で終わってしまうので、どのように聞くのが有効なのかということを英語特有の表現なども含めて相談しながら進められたことは大きかったです。
調査における「質問の仕方」はナインシグマのノウハウでもありますので、お力になれたのであれば幸いです。「OIC direct」ご利用の目的である「そもそも論」は見えたのでしょうか?
今泉さん:はい、ヨーロッパ地域の様子がわかり、日本の事情とは多少異なるということがわかりました。基本的な方針や考え方には学ぶことも多いと思いました。
上原さん:共通の課題に対して取る戦略は地域によって違い、戦略まで同じである必要はない、ということに納得しました。自分たちは次のステップに進めるという確信を持ちましたね。社外の情報を得ることは目的でなく手段ですから、プロジェクトを進めるのに十分な回答でした。
「OIC direct」の特徴である「追加質問機能」もご活用していただきましたが、使ってみていかがでしたか?
今泉さん:「5人まで追加質問できる」という機能は、各エキスパートに個別の質問をして内容を掘り下げることができるということで、とてもよいと思いまいた。実際、当該プロジェクトを知っているというエキスパートもいらっしゃって、その方々に追加でコンタクトし回答をいただきましたが、私たちの質問意図を理解されたうえで、課題への見解を提供いただき、納得感のある情報を得られました。
業界エキスパートに直接質問をして得られる「一次情報」を扱いづらいと感じられるご担当者さまもいらっしゃるかと思います。今回はみなさんのニーズに合致していらっしゃったということですね。どのような場合に特にフィットしそうでしょうか?
今泉さん:そうですね、何を知りたいか、聞きたいか、というニーズによるとは思うのですが、今回はその地域の方々がどう課題を認識しているか調査したかったので、コンサルティングファームや調査会社を通じて調べるような内容ではないと思っていました。業界エキスパートの方から直接回答いただき、フィルターのかかっていない生の情報をそのまま得られるということに意義がありました。
上原さん:「OIC direct」を使うのと、コンサルティングファームや調査会社に依頼するのとでは、金額も期間もだいぶ変わってきますね。今回「OIC direct」を使ってみて、プロジェクトのアーリーな場面、例えば研究コンセプトを考えたりするときに、社外のエキスパートが持っている考えや背景情報を参考として得るために使うのは有効だろうと思いました。非常に気軽なサービスなので、そういう使い方がしやすいですね。
「外部知見」の活用がなかなか進まない組織も少なくないですが、ナインシグマの各種サービスをご利用いただいているみなさんはその点についてどのように感じられていますか?「外部知見」を今後どのように活用されていくかもぜひ教えてください。
上原さん:個人的には外部知見を活用することに抵抗は感じませんね。目的を達成する手段として社外にアイデアを求めることが適切ならば、採用すればよいと思います。
今泉さん:つながりのない業界の方々にアポイントを取って話を聞く、というのはハードルが高いかもしれません。「OIC direct」のようなサービスを使えば、そのハードルがぐっと下がりますよね。
上原さん:確かに、組織外の方に聞くこと自体には抵抗がなくても、組織外の方にアクセスすることが難しいという状況は存在しそうですね。
今泉さん:海外の情報を集める、海外の方にヒアリングする、というのは通常難しく感じますが、今回の「OIC direct」は良い意味でとても簡単に気軽に使うことができるツールだと実感しました。事業のグローバル展開を目指す中で、海外情報の収集は不可欠ですし、今後も活用していきたいです。また、社内の他の部署でもすでに利用予定があると聞いています。
上原さん:私たちとしては、外部知見を活用したプロジェクトを事業化させていくことに注力していきたいですね。事業は自前主義に陥ることなくアイデアの組み合わせで成功していく、ということを事例として示していくことができれば、社内の各事業部や技術者たちに自信や希望を与えることになると思っています。
新組織で2030年以降の未来を見据え事業のグローバル展開を目指されているみなさんの挑戦を、ナインシグマにも引き続きご支援させてください。本日はありがとうございました。